デブ男と痩せている女性の体内

昨今、腸の中にいる微生物に注目が集まっています。
腸脳相関と言って、腸内微生物が便秘などの消化管の動きだけではなく、体の様々な働きに関与していることがわかってきました。
腸内微生物は消化や免疫だけではなく、ドーパミンやNアセチルアスパラギン酸などの神経伝達物質も作っていたようです。

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細菌発見から現代まで

17世紀レーウェンフック(オランダ)の顕微鏡による微生物の発見以来、多くの病原菌が発見されました。
20世紀にはレミング(イギリス)によって抗生剤が発見、人類に多大なる貢献をしてきています。
現在も病原菌微生物は人類のQOLにおける重要なテーマであり続けています。

19世紀末、メチニコフ(ロシア)は、腸内細菌が産生する毒素が老化の原因であるとして、ヨーグルト(乳酸菌)の接種による毒素抑制と健康向上の可能性を見出しました。
1960年代には腸内細菌の研究が盛んになりましたが、この時はまだ経験上によるものが多く、腸内微生物の全容を捉えることはできませんでした。
ところが、2005年以降、従来の手法ではなく、パイロシーケンス式を用いた次世代シーケンサーによる微生物の遺伝情報をまるごと解析することが可能になったため、一気に腸内微生物叢(マイクロバイオーム)の研究が進むことになります。

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痩せ菌とデブ菌

東京大学大学院新領域創成科学研究科の結果より、腸内微生物に対しメタゲノム解析が行われ、総計で70万の遺伝子を同定したほか、腸で見られる微生物由来の遺伝子が4~7万にも上ると報告されました。
その中に還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)などのエネルギー代謝に関連する物質を作り出していることがわかりました。

2006年「Nature」に掲載された有名な論文「An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest: Peter J. Turnbaugh et.al: Nature 444,1027–131」では、肥満と腸内微生物との関連が示されています。
BacteroidetesおよびFirmicutesのバランスにより、食物からエネルギーを摂取する能力に差が見出されました。
いわゆる「デブ菌」です。

同様に2014年、ミネソタ大Julia K. Goodrichらによって、健全な代謝に関わるChristensenallaceaeなども報告されました。
(Human genetics shape the gut microbiome: Julia K. Goodrich, et al.:Cell Volume 159, Issue 4, p789–799, 6 November 2014)「痩せ菌」と理解できそうですが、あくまでも健全な代謝であって、必ずしも体重減につながるものではありません。
しかしBMIなどの数値と関連が示されております。

臨床応用

それならば、太っている人には「痩せ菌」を、痩せすぎている人には「デブ菌」を、と考えるのが自然です。
体重はともかく、がん、炎症性疾患、代謝性疾患、自己免疫病、神経疾患、精神疾患等への応用が期待され、研究が進められています。
一部の疾患に対し、細菌叢への介入が試みられているので、効果はどんなものなのかご紹介しましょう。

中でも潰瘍性大腸炎への糞便移植法が有名です。
2015年7月にはカナダのマクマスター大学が中心となってランダム化比較試験が行われ、アメリカ消化器学会AGAにて報告されました。
研究内容は略しますが、糞便移植により寛解となる統計的に有意な治療効果が認められた、というものです。
しかし、患者の腸内細菌叢や、ドナーの腸内細菌叢のバラツキも多く、ある種の菌による道の疾患感受性上昇のリスクなど、まだ課題は多いようです。

他人の便を体に入れるなんて・・・と抵抗があるもの確かですね。
しかし、経口摂取では、胃酸などによる殺菌効果が強く、ターゲットとなる微生物の定着を図るのは難しいです。

一部では食事や生活習慣と腸内細菌叢との関連も研究が進められており、今後に期待したいですね。

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